「女鳥」も「隼人」も智恵を持つ

 異なる列音の母音が重なった場合、「相対的に狭いほうの母音」が脱落する(第一原則)。また、「CVCV・VCVCV」において、一番目のVと二番目のVが同じ列音の場合は、二番目の母音が三番目の母音より広くても、二番目の母音が脱落し、三番目の母音が残る(第二原則)。


   ・「ハヤ・ウマ」(faya・uma) > 「ハユマ」(fayuma)
   ・「ソホ・アガリ」(sofo・agari) > 「ソハガリ」(sofagari)


 このような母音脱落現象に即して、「曽・富・騰」を「音・音・訓」で読む場合、「ソハガリ」(sofagari)である。その一方で、「ソバカリ」(sobakari)は「ソハガリ」(sofagari)に転じ得る(濁音位置が前後する音転例は珍しくない)。「ソバカリ」(曽婆加里)ならば、「隼人」の名前として出てくる。


   ・「曽富騰」(sofagari)も「曽婆加理」(sobakari)も同じ
   ・「山田之曽富騰」は「曽婆加理」(隼人)に重なる(同一視できる)


 もちろん「曽富騰」を「音・音・音」で読む場合、「ソホド」(ここで「ド」は乙類)であり、こう読むのが最も素直である。併し、「ソハガリ」とも読める点こそが重要。「山田之曽富騰」は、「隼人」であるところの「曽婆加理」に重なる。こういう場合は、「山田之曽富騰」を「隼人」と見なしてよい。


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 ここで注意すべきは、「女鳥」が「速総別」(日本書紀は「隼別」に作る)と行動を共にするという点である。名前が「ハヤブサ」であるところの人は、別の意味において「隼人」である。その「速総別」(隼人)と行動を共にするのが他ならぬ「女鳥」(月宿の【女】を表象)ということである。


   ・「女鳥」(月宿の【女】を表象)は「速総別」(隼人)と行動を共にする
   ・摩登伽経の「女」は舍頭諫経の「耳聡」(聡耳)……兼知未然
   ・「山田之曽富騰」(隼人と見なせる)……尽知天下之事神


 既に述べた通り(7月19日)、月宿の【女】(耳聡)に関して、日本書紀で「兼知未然」と説かれる。それほどの智恵を持つ者として、月宿の【女】は在る。一方、「曽富騰」(隼人と見なせる)に対しても、まさに「尽知天下之事神」と説かれる。「女鳥」と「速総別」(隼人)が一緒に逃避行する脈絡が知られよう。

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