2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「ܡܣܪܐ」(イルカ)が「ܝܘܪܩܐ」(イルカ)を造る話

以下の稿は、7月12日の三つの稿の続きです。 7月12日の稿をまずお読み頂ければ幸いです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 創世記のいわゆるアダムが形造られる場面の一文(シリア語の聖書)は以下の通り。ここで、仮に「A=2」のシステムが働い…

「伊那毘」(印南)は牛宿の和名

古事記の「勾」は一方において「牛」を標示し、一方において「鹿」を標示する。その場合、いずれをも含む形で存在する「針間牛鹿臣」に注目しないわけにはいかない。系譜上の位置づけ(孝霊記に記載)を以下に整理しておく。「若日子建吉備津日子」は単に「…

古事記固有名詞中の「諸」は「勾」に重なる

古事記の「諸」の用例を調べてみると、特に変わった用法は見られない。固有名詞を除けば、「いくつかあるものの総体」(時代別国語大辞典)の意。たとえば連体修飾語として「諸家」「諸人」「諸神」「諸魚」と出てきたり、連用修飾語として「諸咲」(もろも…

「和迩吉師」の「和迩」は「makara」(磨竭宮)

古事記において「大物主」が登場するのは神武天皇条と崇神天皇条だが、特に「美和之大物主」の「美和」が「三勾」に由来することを説くのは崇神天皇条である。その一方で、崇神天皇の陵墓は「山辺道勾之岡上」に作られる。「勾」の岡の上である。「makara」…

「伊波礼毘古」は「イルカ座」(ܝܘܪܩܐ)

記紀の帝紀部分において共通して重要なのは、いわゆる神武を初代天皇に位置づけている点だろう。安閑天皇が月宿の【牛】ならば、神武天皇は月宿の【虚】ということになるが、その場合、記紀は月宿のトップに【虚】を位置づけていることになる。中国における…

「入鹿」について──「ܝܘܪܩܐ」と「ܚܝܬ」の関係

日本の古代文献においては、シリア語のアルファベットの「A」を「2」と数えていることを7月9日の稿で述べた。そう数える場合、たとえば、「BA」=「3+2」=「5」=「D」、ということになる。「BA」の意味は「戸」だが、アルファベットの「D」の意味も「戸」…

「山辺道勾之岡上」(崇神陵)の「勾」は「ܡܩܘܪܐ」

本稿を読む前に、6月21日の《「勾大兄王子」の「勾」について》の稿、 《「讃・珍・済・興・武」は「翼・軫・角・亢・氐」か》の稿をお読み下さい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日本書紀の安閑天皇の御名代の記事の「牛…

古事記の「飛鳥」について(6)──「八瓜」とは何か

摩登伽経は【虚】に関し、「形如飛鳥」と記す。その【虚】に該当する欽明天皇の宮都は「師木島大宮」だが、「大宮」というコードにより、「飛鳥清原大宮」にリンクされている。したがって、摩登伽経の「形如飛鳥」の「飛鳥」は、より詳しくは「飛鳥清原」と…

初代天皇の数字について

セム系の言語やギリシャ語などにおいては、アルファベットによる記数法が用いられる。シリア語においても、「A、B、G、……、θ」が「1、2、……、9」として用いられ、「Y、K、……、C」が「10、20、……、90」として用いられ、「Q、R、Σ、T」が「100、200、300、400…

古事記の「飛鳥」について(5)──「遠飛鳥」は「ASXA」

古事記の「飛鳥」の全箇所を7月4日の稿に列挙したが、そのうちの(4)は「近飛鳥」の命名説話、(5)は「遠飛鳥」の命名説話であった。「曾婆加理」という名の「隼人」にまつわる説話に含まれる形で出てくる。そのことの意味については後述するとして、とも…

古事記の「飛鳥」について(4)──「波流岐」は「PRXA」

日本での「済」の用法の多くは「済む」の意味であり、きれいさっぱりとした状態になることを言う。その意味において、「済」は「清」に通じる。その「済」(允恭天皇)の宮都が「遠飛鳥」である。一般に大和の飛鳥と捉えられている。 日本書紀の安閑天皇の御…

古事記の「飛鳥」について(3)

古事記の序文と本文の範囲を調べてみれば、天皇の宮都で「大宮」に作られるのは、序文における「飛鳥清原大宮」と「小治田大宮」、本文における「師木島大宮」、以上の三者に限る。テクスト論の立場では、この事実を押さえることこそ肝要である。現代風に言…

「Rohini」が「長育宿」に作られる道筋

二十八宿の【畢】に当たるインドのナクシャトラは「Rohini」。意味は「赤い」乃至「赤いもの」。ところが、大体において宿名を意訳に作る舍頭諫経において、その「Rohini」が「長育」とか「長養」に作られている。これは、サンスクリットからの単なる翻訳で…

「狭井河」の「狭井」は「ZY」(ܙܝ)

釈日本紀所収の丹後国風土記逸文に、いわゆる浦島伝説が記されていることは有名だが、その中に「其七竪子者昴星也、其八竪子者畢星也」と出てくる。「昴」は七人、「畢」は八人、という話だが、西洋においても「昴」(プレアデス)は「七人の娘」として知ら…

古事記の「少女」について

古事記の以下の場面は、「大毘古命は北陸平定のために派遣されたが、途中山城の幣羅坂で不思議な歌を歌う乙女に出会う。そこで大毘古命は取って返し、崇神天皇にこのことを報告すると、天皇は建波邇安王の反逆の兆候と判断し、早速追討の軍勢を派遣すること…

月宿としてのアルファベット

著名なジョセフ・ニーダムの『中国の科学と文明(5)天の科学』の脚注(73頁)に、「Moranは、最古のアルファベット文字が28の月宿の記号に由来したということを示そうとし」云々と出てくる。この観点は注目に値する。但し次のようにも述べられている。 中国…

古事記の「飛鳥」について(2)

端的に言えば、古事記のテクスト上において三つの「飛鳥」(遠飛鳥・近飛鳥・飛鳥河)が場所を占めているわけだが、このうち二つ(遠飛鳥・近飛鳥)は天皇の宮都として設定されている。残りの一つ(飛鳥河)は「猪甘老人」を斬る場所として設定されている。 …

古事記の「飛鳥」について(1)

なぜ「飛鳥」と書いて「アスカ」と読むのか。だれしもが疑問に思うところであろう。この問題に対しては、いささか迂遠ながら、まず最初に「飛鳥」という文字列の出典を明らかにしておく必要がある。一定の体系性を備えている古事記において、「飛鳥」に関し…

「須佐之男」の「須佐」は「SWSYA」(ܣܘܣܝܐ)

系譜としては出てこないが、「須勢理毘売」は「須佐之男」の娘として描かれている。「火照/火須勢理/火遠理」が「日の出/南中/日の入り」に比されるならば、「須勢理」は「南」に対応する。十二支で言えば「午」である。「午」の字義は「馬」とは関係な…

「御名方」の標示するもの

7月1日の稿においては、「星神香香背男」の「香香背」が「KWKB」の音写であろうことを述べた。「KWKB」の意味は単に「星」(star)だが、「星神」であるところの「香香背男」は、さらに進んで二十八宿の【星】(Magha)を標示している。 於是二神誅諸不順鬼…

「星神香香背男」の「香香背」は音仮名(ܟܘܟܒ)

日本書紀に使用される音仮名に関しては、最近では森博達氏の論(いわゆるα群・β群)が有名になったが、尚、それぞれの巻の字種にも着目する必要がある。特に訓注に関しては、かつて西宮一民氏が巻三の字種の特異性などについて指摘した経緯も忘れてはならな…