2009-01-01から1年間の記事一覧

古事記の「少女」について

古事記の以下の場面は、「大毘古命は北陸平定のために派遣されたが、途中山城の幣羅坂で不思議な歌を歌う乙女に出会う。そこで大毘古命は取って返し、崇神天皇にこのことを報告すると、天皇は建波邇安王の反逆の兆候と判断し、早速追討の軍勢を派遣すること…

月宿としてのアルファベット

著名なジョセフ・ニーダムの『中国の科学と文明(5)天の科学』の脚注(73頁)に、「Moranは、最古のアルファベット文字が28の月宿の記号に由来したということを示そうとし」云々と出てくる。この観点は注目に値する。但し次のようにも述べられている。 中国…

古事記の「飛鳥」について(2)

端的に言えば、古事記のテクスト上において三つの「飛鳥」(遠飛鳥・近飛鳥・飛鳥河)が場所を占めているわけだが、このうち二つ(遠飛鳥・近飛鳥)は天皇の宮都として設定されている。残りの一つ(飛鳥河)は「猪甘老人」を斬る場所として設定されている。 …

古事記の「飛鳥」について(1)

なぜ「飛鳥」と書いて「アスカ」と読むのか。だれしもが疑問に思うところであろう。この問題に対しては、いささか迂遠ながら、まず最初に「飛鳥」という文字列の出典を明らかにしておく必要がある。一定の体系性を備えている古事記において、「飛鳥」に関し…

「須佐之男」の「須佐」は「SWSYA」(ܣܘܣܝܐ)

系譜としては出てこないが、「須勢理毘売」は「須佐之男」の娘として描かれている。「火照/火須勢理/火遠理」が「日の出/南中/日の入り」に比されるならば、「須勢理」は「南」に対応する。十二支で言えば「午」である。「午」の字義は「馬」とは関係な…

「御名方」の標示するもの

7月1日の稿においては、「星神香香背男」の「香香背」が「KWKB」の音写であろうことを述べた。「KWKB」の意味は単に「星」(star)だが、「星神」であるところの「香香背男」は、さらに進んで二十八宿の【星】(Magha)を標示している。 於是二神誅諸不順鬼…

「星神香香背男」の「香香背」は音仮名(ܟܘܟܒ)

日本書紀に使用される音仮名に関しては、最近では森博達氏の論(いわゆるα群・β群)が有名になったが、尚、それぞれの巻の字種にも着目する必要がある。特に訓注に関しては、かつて西宮一民氏が巻三の字種の特異性などについて指摘した経緯も忘れてはならな…

「興」(安康天皇)は「許碁登臣」に繋がりを持つ

「甲斐国造」の祖が「沙本毘古」とされるということは、「甲斐」を「沙本」に関連づけているということである。ところが、「沙本毘売」の別名は「佐波遅比売」であり、このシリア語「佐波遅」(SHD)は「Svati」(西洋に言うアルクトゥルス)に他ならない。…

「氐」は「秤宮」(ܬܩܠܐ)

いわゆる倭の五王の「讃・珍・済・興・武」のうち、「讃」と「珍」と「興」の三名については、「翼」と「軫」と「亢」の書き換えということで説明がつくが、残りの「済」(允恭天皇)と「武」(雄略天皇)に関しては、どうなのか。特に「武」(雄略天皇)に…

なぜ「鞆の如き完」と説明されるのか

仮に安閑天皇が二十八宿の【牛】だとすれば、それぞれの並び順から、応神天皇は自動的に【星】ということになるが、実際に応神天皇が【星】であることを示す何らかの記述が記紀に見られるだろうか。これに関しては先ず、6月18日の稿を参照されたい。古事記に…

「讃・珍・済・興・武」は「翼・軫・角・亢・氐」か

典拠はともかく、たとえば学研新漢和大字典の【亢】の項を見れば、「すっくとたちはだかる」という意味が載っており、「抗」に当てた用法、と記されている。主たる意味として「たかぶる」「たかい」が挙げられ、他には「傲慢な態度をとる」という意味も載っ…

「勾大兄王子」の「勾」について

日本書記の安閑天皇条に不思議な記事がある。安閑天皇の御名代について述べていると言うしかないが、どうして「牛を難波の大隅島と媛島松原に放つ」ことが「名を後世に伝える」ことになるのか、その点が分からない。安閑天皇の諱は「勾大兄」。他に「大兄」…

「佐波遅」(ܣܗܕ)は「Svati」を含意する

仮に「ΣX」というシリア語が「亢」という漢字を標示し得るが故に「沙本」という音仮名表記によって月宿(lunar mansion)の一つである「亢」を示すことを企図したのだとしても、それは古事記というテクスト上のことであって、もともと「ΣX」という言葉がシリ…

「甲斐の黒駒」について

インドの「Svati」は中国の「大角」に当たる星である。しかし、摩登伽経や後の宿曜経は単純化を図り、これを「亢」に作っている。即ち、「Svati」が「亢」に翻訳されることによって、結果的に「大角」が「亢」に同一視されている。そのため、漢訳仏典も含め…

「沙本」(ܫܚ)と「佐波遅」(ܣܗܕ)

6月18日の稿では「品牟都和気」(本牟智和気)について述べた。続いて「沙本毘売」の「沙本」(サホ)だが、これに対応し得る子音対は「SH」「SX」「SP」「ΣH」「ΣX」「ΣP」と少なくない。このうち特に注目されるのは「ΣX」と言える。Payne Smithの『Syriac …

「品太王五世孫」の必然性(ܦܡܛܐ)

6月17日の「XNA」に関する考察、6月18日の「XMθA」などに関する考察が認められるとすると、シリア語の「X」で始まる語の多くは、その頭子音が、当時のハ行に写されていることになる。その一方、ここでは例は省略するが、シリア語の「P」で始まる語の多くも、…

「品牟都(ܚܡܬ)和気」と「品陀(ܚܡܛܐ)和気」

釈日本紀所引の上宮記に「凡牟都和希王、娶洷俣那加都比古女子名弟比売麻和加生児、若野毛二俣王」云々とある。これを古事記の系譜に照らし合わせてみれば、上宮記の「凡牟都和希」は紛れもなく応神天皇に当たる。「凡牟都」は「ホムツ」と読むしかない。応…

枯野船(3)……「ܚܢܐ」(男根)について

禊祓の場面に出てくる「衝立船戸神」の「船戸」は、日本書紀では「岐」に作られる。こういう場合、この神名において普遍的なものは表記ではない。先に有るのは「フナト」(トは甲類)という言葉である。漢字の「船」の意味、漢字の「岐」の意味、それらは「…

枯野船(2)……「衝立船戸神」との関連

なぜ作るものが「船」なのか、ということを考える場合、その材料である樹が、何の役割を果たす樹であったか、という点を押さえておく必要がある。より正確に言えば、何の役割を果たす樹として描かれているか、という点である。 其の樹の影、旦日に当れば、淡…

枯野船(1)……特に「ܩܠܐ」(音)について

momoyukaさんのブログに「枯野という船」の記事がある。まずは直接の関連事項を記しておく。シリア語を含めたアラム語、ソグド語を含めたイラン系の言語、突厥語を含めたトルコ系の言語など、記紀の不思議とも言える言葉を考える場合に検討すべき対象言語は…